顎が外れてお困りの方へ
顎が外れた(顎関節脱臼)への対応
「あくびをしたら口が閉じなくなった」「大きく口を開けた瞬間に顎が外れてしまった」………
このように、顎の関節が正常な位置から外れて元に戻らなくなった状態を「顎関節脱臼(がくかんせつだっきゅう)」と言います。
- 口が大きく開いたまま、自力で閉じることができない
- 顎に強い痛みや違和感がある
- 上下の歯が噛み合わず、無理に閉じようとしても戻らない
- 言葉がうまく発せられない(話しにくい)
- 唾液をうまく飲み込めず、よだれが出てしまう
- 耳の前の関節部分にくぼみがある
突然顎が外れると、強い痛みや不安を感じるかと思いますが、適切な処置を行うことで多くの場合その場で元の位置に戻すことができます。
南足柄市の武尾歯科では、顎関節脱臼の整復(元に戻す治療)に対応しております。急な症状でお困りの際は、まずは落ち着いて当院までお電話ください。
受付での伝え方について(お電話が難しい方へ)
顎が外れている状態では、お電話で状況を説明するのが難しいかと思います。
- お電話の場合:「アゴが外れた」「口が閉じない」とだけお伝えいただければ、すぐに状況を理解し、優先的にご案内できるよう調整いたします。
- ご来院の場合:受付にて「スマートフォン等のメモ画面」や「手書きのメモ」で「顎が外れて戻らない」とご提示ください。スムーズに対応させていただきます。
顎が外れる原因と仕組み
顎の関節は、耳の穴のすぐ前方にあります。下顎の骨(下顎頭)が、上顎のくぼみ(下顎窩)に収まることでスムーズに動きますが、口を大きく開けた際などに、下顎頭がこのくぼみを乗り越えて前に飛び出してしまうのが「脱臼」の状態です。
脱臼の種類
発生方向による分類
- 前方脱臼:最も多いタイプ。下顎頭が関節結節の前方に移動します
- 後方脱臼・上方脱臼:交通事故などの強い外力で起こることがあり、まれです
経過による分類
- 急性脱臼:初めて、または久しぶりに起きた脱臼
- 慢性脱臼:長期間脱臼したままの状態
- 習慣性脱臼:繰り返し脱臼を起こす状態
- 反復性脱臼:一度整復しても再び外れやすい状態
顎関節脱臼が起こる原因
きっかけとなる動作
- 大きなあくび
- 大きく口を開けての食事(ハンバーガー、りんごの丸かじりなど)
- 歯科治療中の長時間の開口
- 嘔吐
- 気管挿管などの医療処置後
- 笑いすぎ
脱臼しやすい方の特徴
- 過去に顎が外れたことがある方:一度外れると靭帯が緩み、再発しやすくなります
- 関節が柔らかい方:関節の可動域が大きい方はリスクが高まります
- ご高齢の方:筋力低下や関節の変化により起こりやすくなります
- 特定の疾患をお持ちの方:パーキンソン病、脳血管障害の後遺症、てんかんなど
- 向精神薬を服用中の方:筋肉の緊張が緩むことで脱臼しやすくなることがあります
顎が外れてしまった時の応急処置
顎が外れるとパニックになりがちですが、まずは落ち着くことが大切です。
- 無理に動かさない
自分で無理やり戻そうとすると、周りの筋肉や関節を痛めてしまう恐れがあります。
- リラックスする
痛みや緊張で顎の筋肉がこわばると、さらに戻りにくくなります。できるだけ肩の力を抜いてください。
- 早めに歯科医院や口腔外科を受診する
時間が経つほど周囲の筋肉が緊張して戻しにくくなるため、早急な受診をお勧めします。
顎関節脱臼の症状と診察
自覚症状
- 口を閉じることができない
- 噛み合わせようとしても上下の歯が合わない
- 顎に痛みがある
- 唾液が飲み込めない、よだれが出る
- うまく話せない
他覚所見(見た目でわかる症状)
- 両側脱臼の場合:顎が前に突き出し、頬がこけたように見えます(顔面長が長くなる)
- 片側脱臼の場合:顎が脱臼していない側にずれて見えます耳の前あたり(顎関節部)にくぼみが触れることがあります
検査
問診と視診・触診で診断がつくことが多いですが、骨折の有無や脱臼の状態を確認するためにX線撮影(パノラマ撮影など)を行うことがあります。
当院での治療法
顎関節脱臼の多くは徒手整復法という方法で、手術をせずに元の位置に戻すことができます。
Hippocrates法(ヒポクラテス法)
最も一般的に行われる整復法です。
- 患者様に椅子に座っていただきます
- 術者は患者様の正面に立ちます
- 患者様にリラックスしていただき、力を抜いてもらいます
- 術者の両手の親指にガーゼを巻き、口腔内の下顎臼歯部(奥歯のあたり)に置きます
- 残りの指で下顎の外側を把持します
- 親指で下顎を下方へ押し下げながら、後方へ誘導します
- 下顎頭が関節結節を越えると、カクッと整復されます
整復の際は、筋肉の緊張を和らげることが重要です。緊張が強い場合は、筋弛緩剤の投与や局所麻酔を併用することもあります。
その他の整復法
- Borchers法:患者様の後方からアプローチする方法
- 外部誘導法:口の外から下顎角部を押し上げる方法
整復後の処置
整復後は再脱臼を防ぐため、以下の処置を行うことがあります。
- オトガイ帽による固定:顎を固定するバンドを装着します
- 開口制限の指導:大きく口を開けないよう注意していただきます
繰り返す脱臼(習慣性脱臼・反復性脱臼)について
何度も顎が外れてしまう方は「習慣性脱臼」や「反復性脱臼」と呼ばれる状態です。日常生活に支障をきたすことも多く、適切な対応が必要です。
再脱臼を防ぐための生活指導
- あくびをするときは顎の下を手で支える
- 硬いものを無理に大きく口を開けて食べない
- 食べ物は小さく切って食べる
- 長時間の歯科治療では途中で休憩を入れてもらう
- 大笑いするときは顎に注意する
専門的な治療が必要な場合
繰り返す脱臼で日常生活に支障がある場合は、以下のような治療法があります。
- 顎関節硬化療法:関節に硬化剤を注射し、関節の動きを制限する方法
- 外科的治療:関節結節削除術など、手術による治療
これらの専門的な治療が必要な場合は、口腔外科を専門とする総合病院や大学病院へご紹介いたします。
ご家族・介護者の方へ
ご高齢の方や要介護の方は、顎関節脱臼を繰り返すことがあります。ご家庭や介護施設で「口が閉じられない」「食事ができない」などの症状が見られた場合は、顎関節脱臼の可能性があります。
症状に気づいたら、できるだけ早めに歯科医院を受診してください。
受診の目安と注意点
顎が外れた場合、時間が経つほど筋肉が緊張し、整復が難しくなることがあります。できるだけ早めの受診をおすすめします。
当院で対応できない場合
以下の場合は、口腔外科のある総合病院や大学病院をご紹介します。
- 外傷を伴う脱臼(骨折の疑いがある場合)
- 長期間放置された陳旧性脱臼
- 外科的治療が必要な習慣性脱臼
夜間や休日に外れてしまった場合
もし当院の診療時間外に脱臼が起きた場合は、無理に朝まで待たず、以下の対応を検討してください。
- 救急医療機関の受診:夜間休日救急診療所や、口腔外科のある総合病院の救急外来へ連絡してください。
- どうしても受診できない場合:横になって顔の力を抜き、顎を冷やしながら、翌朝一番で当院へお越しください。
顎関節脱臼の保険診療について
顎関節脱臼の整復は健康保険が適用されます。
| 処置内容 | 保険点数 | 3割負担の目安 |
| 顎関節脱臼非観血的整復術(片側) | 410点 | 約1,230円 |
| 顎関節脱臼非観血的整復術(両側) | 820点 | 約2,460円 |
※上記は整復術のみの費用です。初診料・検査料などが別途かかります。